そして父になる
2014年 02月 09日
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大きなスクリーンで繰り広げられる物語に
自己を投影したり、あくまで傍観者として徹したり
それでも何か感じとって 明日への糧にする。
大げさに語れば 外界の光を遮断した闇の空間は 日常と非日常の橋渡しとなる場。
それが映画館かな・・・と思う。
フランスに来て間もなく出会った1人の仏語講師。
語学習得への情熱が全く無さそうな日本人女性(わたし)相手に
彼女のとった手法は
「この生徒の好きな分野を話まくる!」というものだった。
西洋美術、クラシック音楽 そして映画etc.etc.
不思議なもので 共通言語を持たずとも
興味ある内容は 不思議と伝わってくる。 以心伝心・・・とはこのことだろうか?
そんな講師がある日私に言った。
「まかろん♪にお奨めの場所があるわ。
世界各国の映画を上映している映画館があるの。
時折日本の映画も上映しているから フランス語字幕で日本語の映画を楽しめるわよ!」
その場所というのが シネマ・ユートピア。
ボルドーで人気の映画館である。
外壁をご覧いただいて 気づくだろうか?
パテで埋められてはいるがアーチ状の連なる窓。
そう。
ここは 14世紀から16世紀にかけて建てられた歴史ある街の教会。
st.simeon(サン・シメオン)教会が改築され 1999年に映画館に生まれ変わったのだ。
アーチ状の入口をくぐれば
たしかに かつての「教会」を忍ばせる あたたかな雰囲気がそこここに遺されている。
ヴォールト天井の映画館なんて なかなかお目にかかることもない。
映画をみるには とても とても贅沢な空間。
そして 高き場所にさりげなく遺される 聖母子像が 観客を見守っている。
フランス映画を求め 銀座シネスイッチや渋谷の文化村に足繁く通った私が
今 ここで 黒澤監督はじめ 古今の日本の作品を観ているのだから
何ともおかしな話だ。
今日のプログラムは
昨年 カンヌ映画祭で 審査員特別賞を受賞した 「そして父になる」。
ニュースを通し 受賞のことを、
また 夫から フランスで上映されるや否や 好意的な評価を受けていると聞いてはいた。
・・・いやはや・・・・想像以上に重い映画だった。
ストーリーの大まかなあらすじが想像ついた段から
ずっと洟をすすり続ける私。
眼前でひろげられる物語(非日常)が
私のふところ(日常)にまで容赦なく入り込んでくる。
今 横で同じスクリーンを見る
揺るぎないと思う家族が
愛おしい我が子が、
手の届かない場所にいってしまうのではいか?と
不安になり、腕をつかもうとするほど
私は物語と自己の乖離に失敗した(笑)
母性に人種差はないのかもしれないけれど
養子縁組が珍しくないフランスにおいて
この映画への高い評価は
今私が感じている心の動揺とは別の部分での評価なのか?
それとも共通する何かがあるのか?
知りたくもなった。
・・が
語学が不自由な今の私には
その機会はまだまだ巡ってくることはなさそうだけれど(笑) ←なら学べっ!!
エンディングロールで流れる 聞き慣れた
グレン・グールドのゴルドベルグ。
入り込んでいる演奏する彼の声が 繊細で優美なアリアのメロディーを支える「父」のように感じ
ほんの少しだけ 救われるように
映画館を後にした・・・。
今日のさんぽ cinema utopia bordeaux
5 Place Camille Jullian, 33000 Bordeaux
05 56 52 00 03
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# by eaudemontagne | 2014-02-09 08:50 | le chinema